2017年02月03日

雪国

The train came out of the long tunnel into the snow country.

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。


この原文には主語がない。外国人は当惑する。サイデンスティッカーは、trainを主語にしたが、それでは俯瞰的になってしまうとは、中村明も、指摘している通りだ(冠詞の使い方にも疑問がある)。

主人公島村がここにはいない。

原文は、客観描写の後、フローベール流の間接話法に移行するなどという面倒ごとは省き、夢、別世界、への移行過程を、客観描写の振りをした独白で表現している。

では、英訳はどうするのか?

以下私訳:He,in the train,went through a long tunnel under the border ,and it was a snow country.


ついでに。

ヒロイン駒子が、久しぶりに、島村と交尾する場面。

袖をかみしめ、ああ、声なんて出すもんか、と言いながらのたうつ。

中学二年のワチキは、ここで、発射した。


後に駒子は実直そうなその地出身の男(幼なじみだったかな)と結婚した。


老年に到った駒子をインタヴューした映像記録が残っている。

その時でさえ、長身、細面、切れ長の目を持つ、色白の美女であった。若い頃は、さぞや、と思われた。ウィキペディアで見ることができる駒子のものと称される写真の人物とは明らかに異なる。昔から、この写真は、駒子のだと、伝えられてきたが、間違いだ。葉子だ。


あの通りでした、と駒子は語る。

記者が、あれこれ尋ねても、答えは変らない。

あの方が書かれたとおりでした。

彼女の亭主が傍に坐っていた。無言。

駒子は、語りながら、昔を思い出していた。


あの時のこと、お書きになったとおりです。

駒子は、インタヴューの最中に、目が宙を漂う。

ふらり、呆然とする。

我にかえって、またくりかえす。

はい、あの通りでした。

posted by ドリフターズ at 02:36| カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月11日

少女轢死



私が乗っていた列車が、国分寺駅で、先行しようとする特急電車を待っている時、誰かが線路に飛び込んだ。

私はその時、本を読んでいた。

特急電車が、ホームの途中で止まった。

男達の大声が聞こえてきたので、外に出ると、駅員が走ってきて、飛び込んだとき、あなた、ここにいましたか、あの人を見ませんでしたか、と大声で訊く。いや。これが、残ってます。指差した先にあったものは、小さな、花柄のリュックサック。女の子のもの。パンパンに膨らんでいて、日常の生活用品を詰め込んでいたと思われる。家出少女かな。黒い大き目のスマフォがリュックの結び目の上においてある。直前にスマフォで誰かに連絡したのかもしれない。

ホームの一番右端に待機していて、身を投げた。

親に見限られたからか。男に捨てられたからか。

医者なんて来ない。車輪に巻き込まれて、十何輌か連結の車輌の末尾に出てきたのだから。二十人近い男達が、断片を拾い集めて、白衣でくるんて、ゴムベルトで巻いて、グリーンのシートで囲みながら、改札口の横から出した。

死体の足を見た。ヒールではない、ズックを履いていた。小さな足だった。

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2017年02月26日

……

十九の時から数年間仲良くしていた。彼女は、初めて会った時、あなたの話を聞いて、びっくりしたわ、と繰り返し言っていた。なんと言ったっけかな。 観念は物理学に先行する? 
結婚できなかった。以来、連絡はない。
先日、吉祥寺駅で、井の頭線に乗ろうとした際、着いた列車から降りてこちらに向かって歩いてくる人たちの中に、ひとり立ち止まって、私を見ている女がいた。
posted by ドリフターズ at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | カテゴリ無し | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする